古城、修道院、ブドウ畑…
人の営みと自然が調和する
ドナウ川の景勝地

オーストリア北部、ドナウ川下流に広がるヴァッハウ渓谷は、ドナウ川流域で最も美しいといわれる景勝地。とりわけメルクからクレムスに至る約35㎞のエリアは、川岸に建つ古城や修道院、この地方名産のワインを生み出すブドウ畑など人の営みの歴史が色濃く残されていて、ユネスコ世界文化遺産に登録されている。

写真はドナウ川クルーズ船から撮影した渓谷随一のロマンティックな町、デュルンシュタイン。ゆっくり歩いても15分もあれば端から端まで歩ける小さな町だ。川岸のオレンジ屋根の建物群や水色の塔の上に、いかにも古そうな石造りの城跡が目を引く。12世紀に建てられたというケーンリンガー城。イギリスのリチャード獅子心王が、第3回十字軍遠征の帰路に捕虜となり、1192~1193年にかけてこの城に幽閉された。王は莫大な身代金と引き換えに解放されたが、それまでの間、この地のワインやアプリコットのリキュールなどを大いに楽しんだと伝わっている。さすがにライオン・ハートを持つだけあって、肝がすわった王だったようだ。ちなみに今もアプリコット製品は、ワインと並んでこの地の名物。ジャムや菓子、種のオイルを使ったリップバームなどバラエティー豊かで旅の土産にも向いている。

デュルンシュタインへのアクセスは自動車や鉄道など方法があるが、4月上旬から10月下旬にメルク~クレムス間を運航する「ヴァッハウ渓谷ドナウ川クルーズ」をおすすめしたい。上り、下りとも航行しているが、ウィーンから最も近いクレムスからだと川を遡ることになるため時間がかかる。メルクから下ってデュルンシュタインで降りるといいだろう。春から夏には山々やブドウ畑の緑がドナウ川の青い川面に映えて美しい。船内のレストランでは軽食やワインを楽しめる(別料金)。あるいは船を降りてから、町のホイリゲ(居酒屋)に入るのもおつなものだ。美味い白ワインを飲みながらゆったりと故郷に思いを馳せよう。そう、あのリチャード獅子心王のように。



ヴァッハウ渓谷の南斜面の山につくられた段々畑で栽培される白ブドウは高品質で有名。デュルンシュタインのワイナリー「ドメーネ・ヴァッハウ」は、「2020年ワールド・ベスト・ヴィンヤード」の第3位(ヨーロッパ1位)に輝いた。(左)
ハウプト通りはデュルンシュタインのメインストリート。城壁の門をくぐると旧市街に入る。中世の面影を色濃く残す城壁や石畳の道、かわいらしい家並みの中に、パン屋、ホイリゲ、雑貨屋などが点在する。(中)
デュルンシュタインは「ヴァッハウ渓谷ドナウ川クルーズ」の寄港地として最も人気が高い。船着き場から町まで近いのも理由のひとつ。(右)

WEB限定
アザーカット
Other Cut ドナウ川クルーズで巡るヴァッハウ渓谷

  • クルーズの起点の町、メルクのシンボルは、壮大で華麗なバロック様式のメルク修道院。11世紀、バーベンベルク家のレオポルト1世が修道院を建立し、その後、18世紀に改築され、「オーストリア・バロックの至宝」といわれる姿に。

  • クルーズの見どころはいくつかある。メルクから下ると右岸の岩山に建つシェーンビュール城、左岸に見えるヴァイセンキルヒェンの14世紀の要塞教会など。ハイライトは水色の鐘楼と伝説の古城が目印のデュルンシュタイン。

  • 水色の鐘楼を持つ修道院教会は15世紀に創立、18世紀前半にバロック様式に改築された。現在、展示室になっているエリアからテラスに出て、塔やドナウ川を眺めることができる。

  • クルーズ終点の町、クレムス。ヴァッハウ渓谷の東の端に位置し、13世紀には神聖ローマ帝国の税関が置かれたという。時代の変遷を見て取れる歴史的な建物が数多く残り、今も美しい町並みを形成している。

国・地域名:オーストリア共和国
主要都市 :ウィーン(Vienna)
面積 :約8.4万㎢
人口 :約908万人(2023年12月現在)
言語 :ドイツ語
交通 :日本からウィーンへの直行便は2024年4月からオーストリア航空が成田空港から週3便、全日空が羽田空港から毎日就航する予定。
飛行時間は約12時間、料金は往復約18万円(サーチャージは別。)
ヴァッハウ渓谷の起点となるメルクまでは中央駅から鉄道で約45分。(時期により変動あり2023 年11月現在)
※上記ルート案内は一例です。
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