スペインの天才建築家による
麗しき音楽の殿堂

スペインが誇る天才建築家といえば、誰もがアントニ・ガウディの名を挙げるだろう。しかし、もうひとり、ガウディと同時代に「天才」と呼ばれた建築家がいるのをご存じだろうか。その人の名はリュイス・ドメネク・イ・モンタネール。

25歳にしてバルセロナ建築学校の教授となり、2歳年下のガウディを指導したこともあるという。19世紀末に起こったスペインにおけるアールヌーヴォー(新芸術)「モデルニスモ」の旗手として活躍。カタルーニャ地方の伝統に独自の様式を取り入れたモンタネールのスタイルは、当時、ガウディをしのぐほどの評価を得ていたそうだ。花のモチーフをよく使ったことから、「花の建築家」という異名も持っている。

カタルーニャ音楽堂は、そんな彼の最高傑作と名高い。1905年に着工し、1908年に完成した。写真はその大ホール。太陽を模した天井の巨大なステンドグラスをはじめ、モザイクタイル、鉄、石、ステンドグラスによってホールの随所に施された装飾が美しい。そして、日中は窓から降り注ぐ陽の光、夜はシャンデリアのきらめく光がホールを包み込む。このすばらしい音楽堂は、モンタネールのもうひとつの傑作、サン・パウ病院とともに1997年ユネスコの世界遺産に登録された。

ガイドツアーに参加すれば、館内を見学することも可能だ。でも、せっかくならコンサート・チケットを取って、音楽堂という空間の魅力を最大限に味わってみてはいかがだろう。

装飾に重点を置いたのがモンタネールの特徴。イスラム文化の影響を受けたモザイクは細部まで凝っていて色彩豊か(上)。
舞台後ろの壁面の装飾は詩歌・音楽・学問・芸術などを司る女神がモチーフ。上半身を彫刻、下半身をモザイクで左右9体ずつの女神が描かれている(中)。
1階のカフェテリアはコンサートやガイドツアーに関係なく、誰でも利用できる。街歩きの途中で立ち寄ってみては(下)。

WEB限定
アザーカット
Other Cut

  • 1902年、銀行家のパウ・ジルの遺言でモンタネールにより着工。
    総面積14万5000㎡の敷地に48棟の建物が並び、それぞれが地下廊下でつながれ、自由に行き来できるという壮大な計画だった。

  • 1930年、途中からプロジェクトを引き継いだ息子により完成し、病院として開院。
    モンタネールの「芸術には人を癒やす力がある」という信念を表す装飾が、いたるところに見られる。

  • キリスト教の様式とイスラム教の様式が融合したムデハル様式によるレンガ造りの病棟は、まるで宮殿のよう。病棟の上部に並ぶガーゴイルも見どころのひとつ。
    建築当時から病で苦しむ人たちのいる病棟へ、悪魔(死神)が侵入するのを防ぐ役目を担っている。

  • これらの病棟では2009年まで診療が行われていたが閉鎖・修復を経て2014年から博物館として公開。
    写真の「聖ラファエル分院」を含め、4棟が内部まで見学できる。
    敷地の奥に建設された新サン・パウ病院が、診療機能を引き継いでいる。

日本からスペイン、バルセロナへの直行便は現在運航していないため、カタール航空やエミレーツ航空で中東を経由するのが一般的。どちらもトランジットを含めバルセロナまでは約20時間、料金は往復で約20万円。空港から市内へは鉄道やバス、タクシーで40分前後で到着する。
(時期により変動あり 2024年10月現在)
※上記ルート案内は一例です。
※最新情報については、各航空会社の公式WEBサイトなどでご確認ください。

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