イギリス唯一の温泉街で
温泉好きの人々に思いを馳せて

ロンドンから電車で約1時間半。世界遺産に登録されている、バースというイギリス唯一の温泉の町がある。ローマ人によって1世紀頃に温泉がつくられ、数百年にわたって栄えた。写真は1世紀に建てられたローマ遺跡の大浴場「ローマン・バス」。バースの中心地にあるシンボル的な存在だ。19世紀に発掘され、風呂はもちろんプールやサウナ、神殿なども備えていたことがわかった。実際に入浴できないのは残念だが、博物館や見学ツアーで歴史を知れる。

アングロ・サクソン人の台頭を経てキリスト教が入ってくると、温泉や神殿に代わり修道院や大聖堂が建てられた。ちなみに「バース」は彼らの言葉で「風呂」を意味し、英語の「bath」の語源といわれている。

時は移り18世紀、ジョージ3世の時代にこの地域で採掘される淡い茶色の石材「バース・ストーン」を使って、上流階級の別荘「ロイヤル・クレッセント」やエレガントな「パルトニー橋」など新古典主義の優美な建築物が次々に建てられた。華やかな社交界の中心となった温泉リゾートにふさわしい洗練された街並みは、現在にまで受け継がれている。伝統的な英国式の天然温泉に入れる施設やホテルが人気のバースは2021年、「ヨーロッパの大温泉都市群」の構成資産の一つとして世界遺産にダブル登録された。日本から遠く離れたイギリスに、今も昔も僕らと同じく温泉好きがいると思うとなんだかホッコリする。

今も湧き上がる「ローマン・バス」の豊かな源泉は、見学路から見ることができる(上)。
エイヴォン川に架かる三連のアーチが特徴の優美な「パルトニー橋」は18世紀の建築。橋の両側にはショップが軒を連ねる(中)。
アングロ・サクソン時代に起源を持つ教会「バース・アビー」。973年にイングランド国王が戴冠式を行っている。現在の建物は1499年築のもの(下)。

WEB限定
アザーカット
Other Cut 上流階級の別荘 ロイヤル・クレッセント

  • 18世紀のバースで活躍した建築家のジョン・ウッド親子のうち、息子が7年の歳月をかけて1774年に完成させた。三日月(クレッセント)のようにきれいな曲線を描く「世界で最も美しい集合住宅」といわれている。

  • 30戸の集合住宅はバカンスでバースにやってくる上流階級向けの別荘として建てられた。地下1階、地上3階建てで、縦に区切られているテラスハウス。窓から広がる一面の芝生が美しい。

  • ロイヤル・クレッセントは現在も大半が住居として使用されている。
    また、一部はバース屈指の高級ホテルになっていて、レストランでは庭園を眺めながら食事を楽しめる。スパも併設。

  • ロイヤル・クレッセントに向かっていちばん右の部屋は、「ナンバー・ワン・ロイヤル・クレッセント」という博物館として公開されている。18世紀さながらの居間やダイニング、キッチンなどのインテリアから当時の上流階級の暮らしぶりがうかがえる。

イギリス、ロンドンのヒースロー空港へはJALとANAが羽田から毎日直行便を出航しており、飛行時間は14〜15時間。現在モスクワ上空を飛行できないため、2〜3時間飛行時間が長くかかる。料金は約25万円(サーチャージを除く)。バースへはロンドン市内から電車で1時間30分で到着する。
(時期により変動あり 2024年7月現在)
※上記ルート案内は一例です。
※最新情報については、各航空会社の公式WEBサイトなどでご確認ください。

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