バルセロナはスペインの北東部、地中海に面したカタルーニャ州の州都。その歴史は紀元前のローマ帝国時代にさかのぼり、13〜14世紀にはアラゴン・カタルーニャ連合王国として黄金期を迎えた。その後、停滞期もあったが19世紀末になると貿易と織物産業で再び発展期を迎え、モデルニスモと呼ばれる芸術様式が花開く。
アントニ・ガウディはそんな時代に活躍した天才建築家だ。「構造は自然から学ばなければならない」という信念を持っていたといわれ、曲線と細部の装飾に凝った、生物学的な、あるいは宇宙を想起させる神秘的な建築を得意とし、同時代はもちろん後世の建築家にも多大な影響を与えた。彼の作品群は1984年および2005年に世界文化遺産に登録されているが、その中のひとつ、1882年に着工し、現在も工事が行われている未完の最高傑作サグラダ・ファミリア聖堂を知らない人はいないだろう。僕がまだ駆け出しの編集者だった頃、1978年からサグラダ・ファミリアで彫刻を担当し、現在も主任彫刻家を務める外尾悦郎氏の存在を知った。着工から完成まで300年かかると予想されていたが、技術の飛躍的な進歩や建設にかかわる人間の数が増えたことから、ガウディ没後100周年にあたる2026年には完成する目処がたっている。ガウディが生涯をかけた夢、そしてそれを実現することに人生をかけた無数の人々の夢が、あと数年で叶うのだと思うと胸が熱くなる。
サグラダ・ファミリアがあるアシャンプラ地区には、ほかにもガウディによるユニークな建築物が点在しているが、なかでもおすすめなのが写真のカサ・バトリョだ。1904年、繊維業界のブルジョアだったバトリョ家のリフォームを依頼されたガウディは、建物に「海」というテーマを与えた。ファザードは波のようにうねり、色ガラスやタイルがちりばめられた外壁は太陽の光を受けて海面のようにきらめく。中に入り、吹き抜けを上から眺めると、地中海の青い海を、人魚になって潜っていくかのような感覚にとらわれる。白、水色、濃い青色のタイルをグラデーションにすることで、見上げても見下ろしても海を思わせる色合いになっているという。クラシカルな客船を思わせる木枠の窓をはじめ、海の泡をイメージしたステンドグラス、波のような曲線を描く階段、天井、手すりなどすべてをガウディが細部にまでこだわってデザインしており、それらが奏でる躍動感に満ちたハーモニーは、カタルーニャの母なる海への讃歌のようだ。その美しい声は、これからも時代を超えて、人々の心に届くだろう。
編集長 植木 孝
地球の歩き方
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