北米と南米をつなぐ細長い地域を中米といい、ここにグアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの7カ国が連なっている。近年、観光客の人気が上昇しているのが、古代マヤ文明が栄え、数多くの遺跡があるグアテマラだ。なかでも北部のペテン県にあるティカル遺跡は、最も規模が大きく重要な都市遺跡として知られる。紀元1世紀に王朝が成立、最盛期の8世紀には約6万人が住んでいたと推定されるが、9世紀以降、急速に衰退した。人口増による食糧難や環境破壊が原因という説が有力だが、確かなことはわかっていない。約550㎢のジャングルに、建設年代が異なるピラミッド型の神殿や宮殿、住居など大小3,000以上の建造物の遺跡が点在するティカルは、グアテマラ政府によって1955年、国立公園に指定された。さらに1979年には周辺の生態系も含めてユネスコの世界複合遺産に登録されている。
密林の遺跡と聞くと、行くのにはハードルが高いと感じる人もいると思うが、ティカルは国立公園として整備されており、プール付きのロッジやキャンプ場、レストランや博物館などの施設もある。また、約60km離れたペテン県の中心都市・フローレスを拠点にすれば、ティカルを含む周辺の遺跡めぐりツアーが充実していて便利だ。映画『スター・ウォーズエピソード4/新たなる希望』のロケ地としても知られ、隣国の米国人にとっては冒険心をくすぐるリゾートといったポジションだろう。グアテマラは5〜10月までが雨季、11〜4月までが乾季。熱帯低地にあるマヤ遺跡観光には、蚊が少なく朝夕が涼しい1〜3月をおすすめしたい。
高さ約64.6mの「双頭の蛇の神殿」とも呼ばれるⅣ号神殿は、ピラミッド形の基台の頂上まで登ることができる唯一の神殿。ここからの眺め、特に日の出は、旅のハイライトにふさわしい絶景といえるだろう。白い朝霧で何も見えないジャングルにゆっくりと太陽が昇り、金色の光に包まれる。すると、みるみる霧が晴れてきて、神殿のシルエットが浮かび上がってくる。なんという神秘的な美しさだろう。これが現実なのか、夢なのか、わからなくなる。ジョージ・ルーカス監督がこの地をSF映画のロケ地に選んだのに得心がいく。身動きの取れないほどの感動に立ち尽くしながらも、想像の翼は古代へ、そして未来へと自在に広がっていく。かつて、この地に住んでいたマヤの人々は、どこに去っていったのだろう。彼らも、どこまでも広がる圧倒的な黄金色の風景に、心をふるわせたのだろうか。そして遥かな未来、誰かがここに立ち、僕と同じ気持ちになるのだろうか。
編集長 植木 孝
地球の歩き方
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