ラオスはベトナム、中国、ミャンマー、タイ、カンボジアに囲まれた東南アジア唯一の内陸国。約649万人が暮らす多民族国家だ。ベストシーズンは11月〜2月の乾季。祭りやイベントもこの時期に多い。ラオス政府は2018年をラオス観光年(ビジット・ラオス・イヤー)に指定し、さまざまな企画を打ち出している。
この国で最も人気があるのが北部の都市、ルアンパバーン。ナム・カーン川とメコン川の合流地点に位置する緑豊かな街で、仏教国ラーンサーン王国(1353-1975)の王都として栄えた歴史を持つ。現在もその遺構や約40もの歴史ある寺院、フランス統治時代のコロニアル様式の建物などが調和した美しい街並を誇り、1995年、街全体が世界遺産に登録された。この街の名物は僧侶たちの托鉢だ。早朝、寺院が集中するサッカリン通りを中心に、鮮やかなオレンジ色の袈裟をまとった僧侶たちが、何本もの長い列となって街のあちこちを裸足で練り歩く。列にはあどけない少年僧も混じっている。寺院は昔から教育機関としての役割を果たす伝統もあり、地方出身の子どもたちが学問や英語などの教育を受けるために寺に入るケースも少なくないのだそうだ。人びとはひざまずき、祈りを込めて、僧侶一人ひとりが肩に下げている鉢に食事、菓子、現金などを喜捨する。仏教徒の神聖な宗教儀礼だが、近年は観光客向けのお供えセットが売られていて、観光客が地元の人びとと同じように喜捨する姿もよく見られる。僧侶たちは寺に帰ると、「もらいすぎた」托鉢を、貧しい人びとに分け与える。ここまでが一つのサイクルとなっている。
厳かな托鉢の時間が終わると、今度は朝市があちこちで立ち始め、街は次第に活気づいていく。人びとは、明日も喜捨できるように一生懸命に働き、稼ぐ。彼らの思いが僧侶を生かし、貧しい人をも生かす。托鉢は脈々と受け継がれてきた人と人との絆のシンボル。その素朴な美しさに、わたしたちは魅了されずにはいられない。
編集長 植木 孝
地球の歩き方
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ラオス
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