ノルウェーといえばフィヨルドが有名だ。何百万年も昔、氷河の浸食により形成されたギザギザの2万㎞を超える海岸線は、荒々しくも美しい。そのフィヨルドを北極圏に入るほど北に進んだところに「世界で最も美しい場所のひとつ」といわれるロフォーテン諸島がある。大きくヴォーガン島、ヴェストヴォーゴイ島、フラックスタッド島、モスケネス島の4つの島からなり、それぞれの島の間は橋で結ばれている。小さな集落に行くにも道が整備されているので、空港があるヴォーガン島のスヴォルヴァーでレンタカーを借りれば、島内の観光はスムーズにできる。目指したのは、ロフォーテン諸島の中でも特に観光客に人気が高い、レイネという小さな漁村。「アルプスの頂を海に浮かべたよう」という表現がぴったりな、海に突き出る山々に囲まれた風光明媚な村だ。かつてはハンザ同盟の主力商品である干ダラの生産地として栄えた。手前の赤い小屋は「ロルブー(Rorbuer)」と呼ばれる木造の漁師小屋で、このような小屋がレイネ近くの海岸線にも点在している。ノルウェー語で「ロル(Ror)」は「人」を、「ブー(buer)」は「泊まる」を意味する。船着き場が潮の満ち引きに対応できるよう、海に面して高床式になっている。もっとも、今は現役の漁師小屋として使われているものより、改装し観光用の宿泊施設として使われているもののほうが多い。ロルブーの大きさはさまざまだが赤い色は共通している。夏は苔類や高山植物に覆われる緑の切り立った山々に映え、冬は真っ白な雪景色の中でも目立つ。その光景は、まるでメルヘンの世界だ。北極圏にありながら人の営みが延々と続いてきたのは、海が人にタラという恵みを与え、生活を支えてきたからだ。そして、この美しい風景もまた、海がつくったもの。海が結ぶ大自然と人の調和のとれた営みを祝福するかのように、雨が上がり、一筋の虹がかかった。ああ、確かにここは、「世界で最も美しい」場所だ。
地球の歩き方
編集長 植木 孝氏
地球の歩き方 ガイドブック 北欧
ノルウェー、フィンランド、デンマーク、スウェーデンの4カ国を収録。大自然の魅力と美しい都市デザインを楽しむことができる、特集記事やコラムを掲載。ムーミンワールドやサンタクロース村も見逃せない。
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