南米の国、エクアドルはスペイン語で「赤道(Ecua-dor)」を意味する国名の通り、赤道直下に位置する。そのため、暑い国というイメージが強いが、実際は南北約1,000kmにわたって走るアンデス山脈によって、コスタ(海岸地帯)、シエラ(山岳地帯)、オリエンテ(熱帯雨林地帯)、そして太平洋のガラパゴス諸島の4つの気候帯に分かれている。世界で2番目に高い標高約2,850mの首都キトはシエラに属し、「永遠の春」と呼ばれるほど過ごしやすい街だ。その昔、ラジオ少年だった僕は、国際短波放送で世界の国々のラジオ放送を聞くのが好きだった。そのひとつが「アンデスの声」というキトからの日本語放送で、アナウンサーが「キトは赤道直下なのに暑くないのです」と語っていたのを、今でも鮮明に覚えている。
キトは歴史的建造物が残る旧市街(セントロ・イストリコ)と、おしゃれなカフェやショップ、オフィスやホテルなどがある新市街(ノルテ)に分かれるが、1978年、旧市街が世界で最初の世界文化遺産12か所のひとつとしてユネスコに登録された(ちなみに同じ年に、ガラパゴス諸島も世界自然遺産に登録されている)。16世紀には南米大陸におけるキリスト教布教の拠点だったことから、南米で最も古い教会のひとつであるサン・フランシスコ教会や、赤い壁に金色の装飾の祭壇「暁のロサリオ」が有名なサント・ドミンゴ教会・修道院など、旧市街には見応えのある古い教会が林立している。なかでも最も壮麗なのが写真のラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会だろう。かつてインカ帝国の第11代皇帝ワイナ・カパックの宮殿があった場所に、1605年から160年の歳月をかけてイエズス会によって建てられた教会で、7トンもの金を使ってメッキした祭壇の豪華さや、内部の技巧を凝らした装飾の見事さから「金色の教会」として知られている。1987年の大地震でダメージを受けたが修復された。だから、年月を経て落ち着いた色の黄金とキラキラ輝く黄金が入り交じっているのだ。クラシカルな旧市街とモダンな新市街がひとつの大きな都市をつくっているように、新旧の黄金は美しく調和している。
ラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会の外観。バロック様式で建てられた落ち着いた外観は内部の豪奢さとイメージが異なる(左)。
石畳の坂道が続く旧市街には、スペイン・コロニアル調のカラフルな建造物が立ち並ぶ(中央)。
キトの北方約22kmのサン・アントニオ村には赤道が通っていて、博物館を兼ねた赤道記念碑がある。中央の黄色のラインが赤道を示しているということだったが、実際には正確な赤道の位置からは300mほどずれている(右)。
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