世界の色図鑑｜住まいるONLINE

悠久ゆうきゅうの時をかけて
地球が造った
神秘の巨岩

アメリカ合衆国の西部内陸部に位置するユタ州、およびアリゾナ州。
その州境にある人造湖・レイクパウエルを中心に、半径230kmほどのエリアをグランドサークルという。世界自然遺産に登録されているグランドキャニオン国立公園をはじめ、アーチ型の巨岩で有名なアーチーズ国立公園、尖塔岩群のブライスキャニオン国立公園、ザ・ウエーブと呼ばれる砂岩地形のバーミリオンクリフス国定公園など、8つの国立公園と16の国定公園がある巨岩絶景の宝庫だ。
モニュメントバレーもこのサークル内にあり、赤茶けた広大な大地に写真のような300mほどの高さがある巨大なメサ（頂上が平坦な岩山）やビュート（侵食が進んだ残丘）が点在している。この一帯にはアメリカ最大の先住民族であるナバホ族が定住しており、独自の大統領や法律、国旗、学校、警察などを持つ半独立国として認知されている。モニュメントバレーは彼らの聖地でもあるため国立公園や国定公園の指定は受けず、彼ら自身が管理・運営している。
1939年、ジョン・フォード監督が初めてロケ地としてこの地を選んだ。最初の映画『駅馬車』は大ヒットし、以後もナバホ族の協力のもと『荒野の決闘』、『黄色いリボン』など数々の名作を生んだ。途方もない時間をかけて地球が造った景観に映画監督のインスピレーションが刺激されるのか、ほかにもスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』、デニス・ホッパーの『イージーライダー』、ロバート・ゼメキスの『フォレスト・ガンプ一期一会』、ゴア・ヴァービンスキーの『ローン・レンジャー』など、さまざまな作品のロケ地になっている。
日本からのツアーだとグランドキャニオンとセットで、駆け足でめぐることが多いが、太陽光線の加減で刻一刻と表情を変える巨岩の表情は、宿泊してこそ見られる特別なものだ。特に、モニュメントバレーのビジターセンターに隣接して建つ人気ホテル「ザ・ビュー・ホテル」は、僕にとっても一度は泊まってみたい憧れのホテル。ナバホの法律で酒は提供されないが、ここでゆったりと、このうえなく雄大で美しい景色に酔いしれたい。

写真の「フォレスト・ガンプ・ポイント」は、大勢のランナーを引き連れてアメリカ大陸をひたすら走り続けるフォレスト・ガンプ（トム・ハンクス）が、ある日、ふと足を止めるシーンに使われた。国道163号線がモニュメントバレーへとまっすぐに伸びていく光景はフォトジェニック（左）。
神聖なメサの前には「ホーガン」と呼ばれる木と土でつくられたナバホ族の伝統的な住居が見られる（中央）。
町あかりのない夜は、降るような星空の下で巨大なメサやビュートのシルエットが際立つ（右）。なお、上の写真は夜の帳がおりる前の夕景。

WEB限定
アザーカット Other Cut

夜明けの景色を楽しんだら、
バレー・ドライブで西部劇の世界へ。

メサ（頂上が平坦な岩山）の向こうに昇る朝日も、現地に宿泊してこそ見られる絶景の一つ。じっくり堪能してホテルで朝食をとったら、とっておきのドライブに出かけよう。
モニュメントバレー内には迫力のあるビュート（残丘）の合間をぬうように走る全長17マイル（約27km）の未舗装道が続き、公認ガイドなしでバレー・ドライブを楽しめる。
バレー・ドライブには11カ所のビューポイントがある。路面が荒れていて凹凸が激しい道もあるので、車高の高い４WD車がベター。
「ジョン・フォード・ポイント」はバレー・ドライブのハイライト。西部劇の映画監督がこよなく愛した風景のなかで、馬に乗ったナバホ族や、映画の主人公のような自分の乗馬姿の写真を撮ることができる。

国名：アメリカ合衆国
首都：ワシントンD.C.
（Washington,D.C.）
面積：約962万8,000㎢
人口：約3億3,006万人（2021年）
言語：英語
交通：モニュメントバレーへは最寄りの空港からレンタカーなどを利用する。成田からダラス、フェニックス経由でフラッグスタッフ空港まで約20時間、空港からは車で約4時間。あるいはロサンゼルス経由でラスベガスのマッカラン国際空港まで約18時間、空港からは車で約8時間。航空運賃は往復で約20万円前後。（2020年11月現在）
※上記ルート案内は一例です。